模型大隊戦闘日誌、始まるよ!
前回は何やらドッティングを行い、組みかけで放置していたIII号戦車を完成させましたな。
どっちがメインだったのかわかりませんが。
今回も少し作業面のお話になる。
プラモ製作でよくぶち当たる、押し出しピン跡の処理についてだ。
あの凹んでいるやるだよね。
素人時代の筆者もだいぶ苦労していたような。
目立つところにあるものは見栄えに影響がありますからね。
押し出しピン跡ってなんぞい?
まず押し出しピン跡について。
画面の向こうにいる皆も見たことがあるだろう。
パーツ裏側に存在する、丸い凹みや出っ張りのことを。
これが押し出しピン跡。
画像のは過去の一例ですな。
一枚目がタミヤのヴェスペ。
二枚目がトランペッターのKV-1E。
例として出てきたのはAFVですが、航空機やガンプラなどジャンルを問わず存在したり。
プラモデルでは金型に樹脂を流し込んで部品を成型するんだけど……
成型を終えた部品を金型から取り出す際に、棒で成型品を押し出して取り出す。
その際の棒の跡がパーツに残ることで、こういう跡が発生するのだとか。
棒のことを押し出しピン(エジェクタピン)といい、それの跡なので押し出しピン跡(エジェクタピン跡)と呼ぶ。
基本的には裏側とかの目立たないところにあるんだけど……
たまに見える部分にあったりするんだよね。
- 戦車の履帯
- 自走砲やソフトスキンの車内
- 航空機のタイヤ、機内
なんかが特に多いですな。
共通して、一体成型で裏表両方から見えるパーツといいますか。
ワンパーツなので、どうしても片側が裏面扱いになり、押し出しピン跡が残るという。
古いキットなんかだと技術的な問題か設計の問題か、パーツの表面に堂々と凹みができていたりも。
最近のキットは技術が進歩したのか、設計面で考慮しているのか、なるべく目立たない位置に設けられているのが多いよね。
最近だとパーツ本体に押し出しピンが発生しないよう、ランナー部分に押し出しピン部分を設けたり、ゲートが増えるのを承知で押し出しピン用のランナーを設けたものもある。
ドラゴン社のスマートキットなんかでよく見かけるパターンだ。
画像はサイバーホビーブランドで発売された、ドラゴンのIII号戦車M型のもの。
ゲート処理の手間が増えますが、押し出しピン跡の処理をさせられるよりはマシですね。
どちらかといえば戦車よりも、内部が見える自走砲キットで真価を発揮しそうですな。
パターンその1 削って処理
それでは実践。
まずは単純に削るだけで処理するパターン。
これは浅い押し出しピン跡や、凸状になっているものに対して有効だ。
筆者の在庫にあった、ハセガワのメッサーシュミットBf109Eのキットで試してみよう。
画像だと少し見えにくいかな?
- コクピット背面の防弾版
- プロペラの付け根
- 主脚カバーの内側
とかにピン跡が発生しているね。
一体成型で、表裏両方から見えるパーツ。
発生しやすい条件を満たしていますな。
削る際に筆者が主に使う工具は
- 鉄ヤスリ
- 紙ヤスリ
- デザインナイフ
- 彫刻刀の平刃
といったところ。
特に彫刻刀が最も出番が多かったりする。
とりあえず一番簡単そうな防弾版から試してみる。
ここは平らな部分に浅いピン跡が存在するのみ。
一番処理しやすい部類だ。
- 鉄ヤスリで削る
- 板つきの紙ヤスリで削る
……といった感じですな。
ここはシンプルです。
極力簡易的に……が筆者の方針だね。
続いて主脚カバー。
ここはパーツ自体が微妙に凹んだ形で湾曲している。
鉄ヤスリは入らないし、余計なところを削りそうだ。
デザインナイフでもいいけど、角度的にここは彫刻刀の平刃の出番。
普通なら彫刻刀は奥に向かって彫り進めていくものだけど……
ここは手前に引いて削るようにしていく。
画像の場合、青い矢印の方向に何度も引いてカリカリと削っていく。
パーティングラインを処理するときにデザインナイフのカンナがけをするけど……
それと同じことをやるイメージかな?
というよりパーティングラインの処理に彫刻刀を駆り出すパターンもありますな。
削り終わるとこんな感じに。
場所によってデザインナイフや彫刻刀は使い分けるけど……
筆者としては彫刻刀の平刃の出番が最も多いように見えるね。
刃の角度的に、一番入りやすいというか。
筆者の彫刻刀はどこで買ったの?
小学生のときの図工の授業(版画)で買わされた、5本セットの内の1本を引っ張り出して再利用しているだけだ。
時期が時期なので、おそらく自分の金で買ったものでもないだろう。
覚えていないので値段は不明。
5本セットみたいだけど、今のところ使っているのはこの平刃だけみたいだね。
彫刻刀自体は市販で様々なものがあるみたいですな。
その後は紙ヤスリで仕上げ。
これで完了ですな。
実際この位置の押し出しピン跡は主脚が重なるから見えにくくなるんだけどね。
筆者としては気になるので処理しておいた。
プロペラ付け根も同様に削って処理。
これで完了ですな。
今回は比較的広い面だったけど……
キットによっては奥まった部分に押し出しピン跡が設けられている。
こういうのに筆者はより狭い平刃の彫刻刀的なものを使い、仕上げの紙ヤスリも
「隙間に合わせて細く切ったものをピンセットでつまむ」
などしている。
狭い平刃。
筆者はハセガワのモデリングチゼルを愛用しているみたいだね。
紙ヤスリはいつものを細く切って、折り曲げて強度を上げているだけ。
パターンその2 埋めて削って処理
続いて埋めて処理するパターン。
こちらは削るだけだとパーツの形が歪みやすい、比較的深いピン跡に対して使う。
えっと、このパーツは……。
以前組んだタミヤの紫電一一型甲のもの。
完成させたと思っていたけど、実は取り付け忘れの部品があったようでね。
加工ついでに追加してみよう。
埋めるために使うものはパテとか瞬間接着剤とかあるけど……
今回は最近筆者が多用している、伸ばしランナーを使ってみよう。
あらかじめストックしておいた、やや太めのものを用意。
伸ばしランナーについては過去記事参照ですな。
直近で散々語っていますので。
伸ばしランナーを輪切りにして、接着剤で溶かしつつピン跡に押し込む。
多少径が異なっても、溶けたプラ成分が隙間を埋めてくれるので大丈夫。
合わせ目消しのような感覚で溶着してみよう。
巷じゃあ「ランナーパテ」みたいなものがあるみたいだね。
伸ばしランナーは細くなっている分、そのままのランナーよりも溶かしやすいという。
乾燥したら先ほどの削るパターン同様、各種工具を使って削って平らにする。
これで完了。
流し込み式速乾の接着剤を使っているので、あっという間ですな。
流し込み式速乾は筆者の作業効率向上に大きく貢献している。
これで作業環境はだいぶ変わっているね。
念のためサーフェイサをも吹きつけ。
見た感じ目立った凹みもありませんな。
そのまま塗って紫電本体に取り付けている。
これで紫電一一型甲が改めて完成だ。
……本当は来週の例の日に間に合わせるため、この部品を実験台にしたのかな?
可能性は高いですな。
ここの黎明期を見てわかるとおり、少し前の筆者は瞬間接着剤や溶きパテ(ラッカーパテ)を使って処理するパターンが多かった。
ただ異素材だからプラパーツと異なる感じで削れたり、作業中に剥がれることが気になったらしく。
今は伸ばしランナーで埋めるのをメインにしているとか。
ランナーと違って流動性があるから、狭い隙間とかはこっちのほうがよさそうだけど。
この辺りは使い分ける感じで。
番外編 パーツを貼り付けて隠す
削るか埋めるかの2パターンだけと思っていたけど、筆者が思い出したのでついでに紹介。
適当なパーツを上から貼り付けて隠してしまうというパターンだ。
どちらかといえば、スケールモデルよりもキャラクターモデル向きなものかもしれない。
画像は過去に筆者が作ったガンプラのHGレギンレイズ。
肩アーマー裏の押し出しピン跡に、マイナスモールドを貼り付けて隠した。
パーツ代がかかる分、整形の手間がないから一番簡単そうな。
どんなパーツを貼るかはお好みで。
作業まとめ
そんなこんなで今回の実践は終了。
押し出しピンの処理に関して筆者は
- そのまま削る
- 埋めてから削る
のどちらかを使用することが多い。
番外編として、パーツを貼り付けるものも紹介した。
待ち時間やらなんやらで埋めるほうが手間なので、どちらかといえば筆者はそのまま削るパターンのほうが多いですな。
深いピン跡を削ると形が歪んだ感じになりますが、段差がなくなるのでスミ入れ時に目立つこともなくなりますし。
筆者の組む航空機模型の機内側壁なんかはそんな感じ。
よく見ると削ったことによる歪みがあるけど、そんなにじっと見るものではない……
みたいな。
筆者は完成品をたくさん並べたいから、なるべく簡潔に済ませたという。
迷える子羊……ではなくモデラー達へ何か参考になれば幸いだ。
それでは今回はここまで。
あるかわからないけど、次回もお楽しみに~。