模型大隊戦闘日誌、始まるよ!
前回はアカデミーのヘッツァーが無事に完成しましたな。
今回は……。
筆者は普段エアブラシを使ってプラモの塗装をしている。
しかし世の中には予算や作業環境の問題か、エアブラシを持っていない・使うことができないモデラーもいるようだ。
塗装の問題……
スケールモデルになかなか人が入らない原因のひとつだね。
子供のころの筆者は博物館で購入したタミヤのステゴサウルスの色を塗らずに組んで楽しんでいましたが……。
というわけで今回はそんな人たちのためにエアブラシを封印。
筆者が筆と缶スプレーを使って戦車模型を塗ってみるところをお届けしよう。
今回の犠牲者 アカデミー 駆逐戦車ヘッツァー後期型
そんなわけで今回題材になってもらうのはこちら。
アカデミー社より
駆逐戦車ヘッツァー後期型だ。
これはいつぞやの……。
うむ。
このキットは2012年ごろに発売。
筆者が発売後すぐに購入・途中まで作ったものの、付属のマスキングテープを使ったマスキングに失敗。
やる気と一緒にキットを遺棄して現在に至る。
2年前に他のキットと一緒に発掘されていたよね。
これだけ作られずにまた放置されたけど。
2012年の発売直後に購入……
現在は2023年の1月ですから、約10年間そのままということに。
なので今回はこれを復活。
そのついでにこのキットを使って、エアブラシを使わない戦車模型塗装をしてみよう。
キット内容の簡易的な確認
作業の前にキットの内容を一度確認。
まずはパーツ一覧。
作りかけなので説明書を使って確認。
初期型と異なるのはEランナーとGランナー。
それぞれ車輪パーツと車体上部パーツだ。
後期型の主な特徴は
- ボルトの減った転輪
- 穴の少ない誘導輪
- 車体前面のバイザーが直視型から潜望鏡方式に。
- 車体後部のマフラーが横置きから短い縦置きになり、機関室上に移動
- 車体左右のシュルツェンが巻き込み防止のため、前後で内側に曲がっている
といったところですな。
付属デカールはこちら。
国籍マークが2種類計6枚付属するのみ。
収録されている塗装は1種類のみ。
ヘッツァーによく見られる円を重ねたような塗りわけの3色迷彩に、点々を重ねた「光と影迷彩」だ。
右側が塗装図として、左は……。
先ほども少し触れたけど、このキットにはこの塗装を吹きつけ塗装で再現できるよう、専用のマスキングシールが付属する。
それの貼り付け指示だね。
ただ当時戦車模型だった素人はうまく貼り付けることができずに……。
途中で遺棄してしまったわけですな。
なので今回はこの貼りかけのマスキングは一度剥がし、筆塗りで仕上げることになる。
塗装前のレストア作業
とりあえず本題である塗装に進むため、マスキングテープを剥がして各部組み立てを行う。
一部形が異なるだけで、基本的な部品構成や施した改造は前回完成させた初期型に準じている。
詳しくはそちらを参照にしてもらいたい。
ちなみに初期型のヘッツァーはこの後期型が発売された翌年の2013年に発売。
模型では逆の順番になったわけですな。
塗りかけで兵士も放置されていたのでこれも今回作る。
初期型を作っている際に触れたけど、この兵士たちは初期型のキットでも同一のものが付属する。
躍動感あるポーズがいい感じ。
ただ他のキット付属のものと少し比べると少し痩せ型に見えるかな?
ひょろいというか。
戦争末期の兵士と考えればこれもありなのかと。
ちなみに車長(画像左)はピストルホルスターを紛失していますが、筆者がこの段階ではまだ気づいていません。
後で気がついて取り付けています。
これでレストアが完了だ。
いよいよ本題の塗装に入る。
缶のサーフェイサーを吹き付ける
まずは下地からだけど……
今回はエアブラシ禁止だよね。
筆者はいつもビンのサーフェイサーを使っていたけど。
サーフェイサーはキット表面を滑らかにするもの。
エアブラシは使わないけど、均一な塗装面を作りたいので筆塗りもしない。
というわけでここは缶スプレータイプのものを使用する。
使用したのはMr.サーフェイサーの1000番。
ガンプラ素人時代の筆者もよく使っていたものですな。
今はもっぱら捨てサフ要員ですが。
缶スプレーは細かい制御が難しく厚塗りしがち。
20~30cmほど離れたところから数回に分けて吹きつけよう。
吹き始めはダマっぽいから注意してね。
直接吹き付けるというよりは、左右にスライドさせながら吹き付けるというか。
ここからが筆塗りですな。
まずは暗い色である履帯から……
今回はモデルカステンの履帯色を使っています。
履帯はウェザリングをしていくので多少雑でも問題ない。
ガンガン塗ってしまおう。
何か他の色もここで塗っているね。
車体の奥まった部分はMr.サーフェイサーのマホガニー。
兵士の顔や肌はガイアカラーのノーツフレッシュピンクを筆塗りしている。
これらも上から別の色を塗り重ねるので、多少雑でも問題ない。
ちなみに筆者が現時点でメインで愛用しているのがこのクレオス製
Mr.ブラシシリーズだ。
シリコングリップ製なので長期間握っていても疲れにくいのが長所だ。
それなりに耐久力もあるので、毛先も広がりにくい。
思ったより消耗しないので、ストックがなかなか減らないというやつですな。
とりあえず履帯の塗装が終わるとこんな感じに。
案の定少し雑ですな。
転輪は後で別の色を塗るので、ここまで塗り分ける必要はなかったかもしれません。
実は筆者が履帯を筆塗りしたのは今回が初めてだったりする。
迷彩の境界線を下書きする
下塗り系の塗装がすんだので、いよいよ車体の迷彩となる。
まずは塗装図を参考に鉛筆で各塗り分け部分を下書きする。
これは以前タミヤの中期型ヘッツァーとか、チハでも似たようなことをしていたね。
筆者は色の境界がはっきりしたタイプの迷彩にこの手法をよく用いますな。
筆塗り迷彩開始!
それではここから筆塗りをしていこう。
まずはダークイエロー。
今回はガイアカラーのダークイエロー2を使う。
境界線を先に塗って、その後内側を塗りつぶしていく感じだね。
車体下部もこの色で塗りつぶす。
外から見えないところなので、多少雑に塗っても構わない。
面積が広くて大変ですな。
エアブラシを使いたくなります。
今回はエアブラシ禁止だ。
広い面なので缶スプレーを使うのもいいかもね。
そのままダークイエローを塗り重ねて仕上げてもいいけど……
- モチベーション維持
- どこにどの色を塗るかの確認
の2点を考慮して、1回目の筆塗りは使用する他の迷彩色も塗ってしまうのをおススメする。
他の色はダークグリーンとレッドブラウン。
同じくガイアカラーのオリーブグリーンとレッドブラウンを使用して塗ってしまおう。
この時点だとまだ下地が見えてムラがすごい感じ。
今回使っているガイアカラーはMr.カラーなどと同じラッカー系。
このタイプの塗料は乾燥していても、溶剤成分で下地の塗料が溶けてしまう。
なので塗り重ねるときはサッと薄く短時間で済ませてしまおう。
画像の手前に写っているグリーン部分が不自然に白くなっていますな。
これは何度も筆で往復した結果、先に塗ったグリーンが溶け出して下地のサフ部分が見えた結果です。
一度乾くまで待ちましょう。
あまりしつこく往復せず、一方方向にサッと塗って乾燥させる。
これを繰り返していこう。
タミヤアクリルや水性ホビーカラーなどアクリル系塗料の場合は別ですな。
あちらは完全乾燥すると同じアクリル溶剤や水では溶け出しません。
筆できっちり塗り分けるならアクリル系塗料のほうがいい感じかな?
臭いが少ないのもアクリル塗料の利点だね。
今回はドイツ軍3色迷彩用のアクリル塗料が手持ちに揃っていないので、ラッカー系塗料を使って進めている。
ラッカー系の場合逆に溶ける性質を利用して、色の境界にぼかしをつけることもできるね。
塗り重ねていこう
これは2回目を塗り重ねた直後の状態。
筆者はいつも1回目を塗り終えた後は1色ずつ塗り重ねていく。
今回は比較のため全ての色を同時に塗り重ねて進めている。
少しだけムラが消えてそれらしくなった感じ。
でもまだまだ下地が見えるね。
3~4回塗り重ねるとこんな感じになる。
今回はこれで終了としよう。
多少まだ筆の跡が見えるけど、これでいいかな?
ウェザリングとかでどうにかしますからね。
寧ろそれを考慮して、縦向きの筆の跡はあえてつけているような感じです。
裏側はこんな感じ。
ここはひっくり返さない限り見えないので、この状態で止めてしまう。
車体下部側面もウェザリングしたりシュルツェンで隠れるのでほどほどに。
やっぱりエアブラシが使いたくなるね。
もしくは缶スプレーかな。
後は「光と影迷彩」特有の点々。
これは面相筆で先ほどの塗料をそれらしく置いていく。
今回の車輌は
- イエロー地にはグリーン
- グリーン・ブラウン地にはイエロー
を置いていくことに。
あまり深く考えずに……
点々は三角だったり丸っこかったり細長かったりさまざま。
塗装図を参考にチョコチョコ置いていこう。
これで今回のメインコンテンツである車体の迷彩筆塗りは終了ですな。
そのまま一気に完成までダイジェストで進みます。
部分塗装!
筆を握っているのでそのまま細かい装備の塗り分けを筆で行う。
ここはいつもどおりだ。
いつもは黒い下地を生かしている転輪のゴムリム。
今回は水性ホビーカラーのタイヤブラックで塗り直しています。
ヘッツァーは転輪が少ないので塗り分けは容易ですな。
ウェザリング!
その後はウェザリング。
これは以前作った初期型や中期型とほぼ同様なので、それらを参考にしてもらいたい。
ほとんど関連記事のまとめ状態になっているんだけどね。
いつの間にか塗り終えていた兵士二人。
兵士の塗り方も過去記事の方法に準拠しています。
詳しくはそちらで……。
つや消しも缶スプレーで仕上げる
後はつや消しクリアーですが……
ここも普段筆者はエアブラシ吹きでしたな。
今回はエアブラシ禁止ですが……。
昨年6月のII号戦車の記事で少し触れているけど……
筆者がIII号戦車N型を購入しようとした際、店員さんに乗せられてプレミアムトップコートを購入していた。
確か当時某所のヨドバシでのキャンペーンだかで
「プラモと一緒に購入するとプレミアムトップコートが10%オフ」
みたいのがあったような。
せっかくなので今回はこれを使う。
プレミアムトップコートは水性ホビーカラーと同じようなアクリル系の塗料。
光沢などの種類もあるけど、今回はいつものエアブラシ吹き同様つや消しのものを使おう。
サーフェイサーと同様、やはり20~30cmほど離れたところから吹き付ける。
厚く吹こうとすると塗料が垂れるだけではなく、つや消し成分で白く曇ってしまうので注意だ。
今回は問題なかったけどね。
白くなってしまった場合は光沢のクリアーを吹き付けると軽減できます。
心配な方は光沢のトップコートも用意しておくとよいでしょう。
つや消しの合間にタミヤのウェザリングマスター擦り付け。
ざらついた表面に粉ものが引っかかるからいい感じに定着するよ。
後は各部品を取り付け完成だ。
ハッチ類はピットマルチで仮留め。
兵士は単純に乗せている。
車長は車内に足場がないので宙ぶらりんになるから、安定させたいなら足場を自作するといいかもしれない。
以下、ギャラリーとなります。
アカデミー 駆逐戦車ヘッツァー後期型 完成!
10年越しの完成となりましたな。
初期型・中期型・後期型と並べて比較してみよう。
まずは横から。
主に足周りでの変化ですな。
初期型と中期型はほぼ同様。
後期型は
- 転輪のボルト数が少ない
- 誘導輪の穴が少ない
- フェンダーの前後端が内側に折れ曲がっている
といった特徴があります。
続いて前から。
よくよくみると違いがあるね。
主に主砲の防盾と車体前面の視察用バイザーで差異が。
- 初期型→大型の防盾に直視型バイザー
- 中期型→軽量化を図り防盾が小型化。バイザーは直視型のまま
- 後期型→防盾は中期型同様。バイザーがペリスコープと雨どいの組み合わせに
といった感じだ。
後部は
- 初期型→横置き式のマフラーに穴あきのカバーつき
- 中期型→マフラーは横置き式のままだがカバーが廃止。機関室天板右下にあった予備履帯ラックが後部パネル右側に移動
- 後期型→マフラーが短い縦向きになり、機関室天板に乗る形に
といったところですな。
作業まとめ
……というわけで筆塗りと缶スプレーでヘッツァーを塗ってみたわけですが。
今回はヘッツァーでよく見られる境界線のはっきりした迷彩を再現してみた。
いくつかコツはあるけど
- 先に境界線部分に色を塗り、その後内側を塗りつぶす
- ラッカー系塗料の場合溶剤で下地が溶け出す。なのでサッと塗って乾かすを繰り返して塗り重ねていく
といった辺りに気をつければ大丈夫だ。
ただやっぱり広い面積を塗るのには少し時間がかかるね。
普段はエアブラシでほとんどの塗装をしている筆者。
今回は筆や缶スプレーも試したけど……。
エアブラシ・缶スプレー・筆。
筆者の見解は……。
筆者のそれぞれに対する感想だけど……
まずエアブラシに関して
- 薄く細く吹き付けることができるので自由度が高い
- ビン入りの塗料を使うので長期的なコスト面はそこまで高くない
- コンプレッサーやハンドピース部分などの初期費用がとにかく高い。ブース(換気扇のようなもの)もセットするとそれなりの値段に
缶スプレーに対しては
- エアブラシや筆と違って使い捨てなのでメンテナンスとかはほぼ不要
- 塗料が一気に吹き出すので広い面積を一気に塗れる
- スプレーの単価が高いので長期的に使うとコスト面で不利
- 入れ物の都合上混色はできない
筆塗りは
- 筆とビン入り塗料を使うので導入コストは低め
- 塗料が飛び散らないので狭いスペースでも作業ができる
- マスキングをしなくても曲面などの複雑な境界線の塗りわけがしやすい
- 慣れないと厚塗りになりがち
- 広い面積を均一に塗るのに時間がかかる
といったところ
今回のヘッツァーとか以前のチハたんみたいな
「塗り分けの境界線がはっきりしていて曲線メイン」
というときは筆塗りが一番やりやすいかな?
ただ迷彩でない車体下部の塗り分けには少し苦労したみたいですな。
今回の場合ダークイエロー部分はスプレー塗装にしたほうがさらに作業しやすかったかと。
筆者はプラモデルの世界に入る直前に読んでいた鉄道模型誌の影響か、缶スプレー塗料ををほとんど使わずすぐにエアブラシに移行してしまったけどね。
ちなみに筆者はタミヤのHGコンプレッサーレボIIとベーシックエアーブラシの組み合わせを愛用しているよ。
缶スプレーに関しては、基本的に捨てサフや道中のクリアーコート用のものを保有するぐらいですな。
上記の筆者の感想どおりエアブラシと違ってハンドピースの準備とかをする必要がないのが利点なので、サッと吹き付けたいときに真価を発揮します。
というわけで今回はこの辺りでお開き。
筆者の作業に記事が追いついてしまっている。
なので次回は未定だ。
あるのかわからないけど、次回もお楽しみに~。
この記事で作っているキット