プラッツより、黒森峰のIII号戦車を組み立てていきましょう。
それについてなんだけど……
前回履帯を残して組み立てが完了した。
そのキット付属の履帯が、経年劣化で使い物にならないってやつだよね。
なので筆者が奮発。
ダメになったベルト式履帯に代わって、モデルカステンの可動履帯を初導入することにした。
今回はそれのレビューも兼ねてじっくり組み立てていこう。
あのメーカーの履帯ですか。
模型誌とかではよく見かけますが、筆者は使ったことがありませんな。
可動式履帯……
アミュージングホビーのフェルディナント付属のを作ったぐらいかな?
あれとはまた違った作りとなっている。
立ち話をするのもなんだし、とりあえず実物を確かめてみよう。
今回使うもの モデルカステン連結可動履帯シリーズ SK-18
そんなこんなで今回用意したものはこちら。
モデルカステンの連結可動式履帯シリーズより
SK-18 III/IV号戦車中期型用履帯[タイプA](可動式)
だ。
なんかすごい長ったらしい名前。
名前のとおり第二次世界大戦のドイツ軍戦車、III号戦車とIV号戦車系列用の履帯ですな。
これらの車輌は派生種含めて大戦の全期間で使われたこともあり、時期によってさまざまな履帯が存在します。
詳しい形式とかは後で触れることにしよう。
……ちなみに今回のは可動式履帯。
接着固定する組み立て式履帯とまた違ったものとなる。
そちらは当該過去記事を参考にしてほしい。
箱の中身を見てみよう
それでは箱を開ける。
中身はこんな感じ。
小さい箱の中に小さいパーツがみっちりと。
紙媒体その1。
III/IV号戦車用履帯のバリエーションとその品番対応表。
今回のSK-18は左から4番目だ。
年表によると1941年から44年まで生産された……ようですな。
ここに掲載されたIII号/IV号戦車系列用履帯をざっくり分類すると……
- 初期型→最初のIII/IV号系列用履帯。狭い36cm幅や38cm幅
- 中期型→武装や装甲の強化によって増加した重量に対応して、幅の広い40cm幅になった
- 後期型→履板の接地面にハの字状の滑り止めがついている
- 最後期型→軽量型とも。履板の接地部分に軽め穴の凹みがついている
といったところ。
ただ同じ時期でも細部が異なるものが……。
どうも筆者が今回のIII号戦車を3年近く放置したのはそれが原因のようですな。
履帯の細かい違いがわからず……。
紙媒体その2、組み立て説明書。
一部のキット(タミヤの新旧IV号戦車シリーズやイタレリ)は加工が必要となる。
その加工方法も記載されているね。
タミヤの新旧……
IV号戦車J型以降が新シリーズで、それ以前が旧シリーズっぽいね。
パーツの確認
続いて各パーツの詳細を確認。
まずは履板パーツ。
1ランナーに4つ分付属する。
ここがタイプごとに大きく変わるものですな。
先ほど大まかに初期~最後期型で確認したけど、ここで40cm幅の中期型3種類でも形状の違い確認。
- SK-24(旧型)→履帯の両端に穴がない
- SK-18(中期型A)→履帯の両端に穴がある。ガイドホーンも穴あき
- SK-23(中期型B)→履帯の両端に穴がある。ガイドホーンに穴がなく板状
なんかすっごい些細な違い。
筆者も理解できずにIII号を放置……。
ようやく黒森峰のIII号が履いているのがSK-18であることが断定できたので、今回購入に踏み切ったんだ。
続いて接続ピン。
1番と2番でわずかに形状が異なるので注意ですな。
なんか丸っこいパーツが混ざっているね。
おそらく説明書に記載されていた、タミヤ新IV号系列の転輪回転化パーツだと思われます。
説明書にはガイドホーン用ランナーに含まれていると書かれていますが、このようにピンパーツにも同様のものが。
今回はドラゴン・サイバーホビー製品なので使わない。
ガイドホーンパーツ。
筆者はセンターガイドとも呼ぶことがあるね。
ここではガイドホーンに統一しよう。
今回は穴あきタイプですな。
折らないようにしたいところです。
真ん中にある丸っこいパーツ、さっきも触れたタミヤIV号シリーズ用だね。
その他パーツ。
左は組み立てに使う治具。
右は誘導輪アーム可動化改造パーツだ。
タミヤの新IV号系列に対応している。
今回はドラゴン・サイバーホビーのIII号戦車。
不要ですな。
実際に組んでみよう
それでは実際に説明書の指示に従い、組んでみよう。
治具では1セット8枚までつなげることができる。
とりあえず
- 履板ランナー2枚
- 接続ピンランナー1枚
- ガイドホーンランナー1枚
を用意する。
まずは履板を切り出し、治具にはめこむ。
切り出すとき、パーツを欠けさせないように注意してください。
ピンの取り付け穴が欠けた状態になりますと、後でピンをはめても外れてしまうので……。
続いて接続ピンパーツを用意。
実物は1本の細長いピンを差し込んでいるようだけど……
キットでは両側から小さいピンを差込み挟みこむような形になる。
説明書によると、たまに短い不良品が混ざるようだね。
多めに用意してくれているから、足りなくなることはないみたいだけど。
「わざわざ検品する手間を考えたら、最初から多めに入れておいたほうがいい」
……そういったところでしょうか。
ピンはランナー根元が細くなっている。
ランナーごとピンをもぎ取ってしまおう。
1番と2番が混ざらないように……。
ランナーごともぎ取ったピンの先端にスチロール系接着剤を塗る。
つけすぎると可動部分が固着するので注意しよう。
ここはトロトロしたタイプの出番ですな。
筆者はタミヤのリモネンセメントを使っています。
接着剤を塗ったピンをランナーごと差し込む。
なんかの生物みたい。
ピンを差し込んだらランナーを切り取る。
これで各履帯は接続完了だ。
ただピンがそこまで長くないので、あまり力を加えてはいけませんな。
続いてガイドホーンを取り付け。
ここも接続ピン同様、ランナーごともぎ取り接着する。
ここもトロトロタイプがいい……
と思いきや、乾燥して固着するまでにランナーの重さで倒れてしまうことが多々ありました。
なので流し込みの速乾を塗り、貼り付ける形に。
可動部に流し込まないように注意してください。
ここも接着後、ランナーを切り取る。
パーツギリギリのところでニッパーを使いカットしてしまおう。
これでようやく……。
後は治具から外せばこんな形のパーツが出てくる。
これで1セットが完成だ。
8枚がつながったパーツだよね。
ところで何枚つなげればいいのかな?
説明書によりますと
- III号戦車→93枚~95枚
- IV号戦車→99枚~100枚
だそうです。
無論片側ですな。
これは気が遠くなりそうだね……。
ひたすら組み立てる
とりあえず残りのパーツをひたすら同じように組み立て、複数用意しましょう。
先ほどは説明するために、完全に組み立てた。
作業効率を考えると、1組ずつ完全に作るよりは同じ工程である程度まとまった束数を作るほうがよさそうだ。
筆者は最初、説明書を見ながらそれの指示に忠実に作るけど……
段々と進めていくうちに、作業をしやすいよう工具の配置が変わっていく。
ガイドホーン取り付け時はこんな感じに。
右手でピンセットを使いガイドホーンパーツを保持。
左手で接着剤塗布ですな。
一気に目的の枚数全てを組む人もいるみたいだけど……
筆者の場合それをやると何枚つなげたかわからなくなる。
なのである程度まとまった枚数の束を複数用意する。
説明書によると、III号戦車は93枚~95枚が標準。
なので
- 8枚×11束
- 5枚×1束
の93枚分をとりあえず用意します。
束がそろったらそれぞれ接続する。
これで1本の履帯になるんだ。
ピンの接着はさっきと変わらず……。
できあがった履帯がこちら。
うねうね動かしたくなるけど、そこまで強度は高くないので極端に曲げたりしないように。
特にひねる力には弱いので注意だ。
もう一本も組み立て完了しました。
これでそろいましたな。
長さチェックの仮留めをしてみる
それでは仮留めして長さを確かめてみよう。
歯のある機動輪部分に両端が来るようにする。
機動輪は接着していないよ。
こういうときにクルクル回るほうが合わせやすいからね。
上部転輪は接着したほうがよかったですな。
作業中にポロポロ外れます。
とりあえず93枚で仮留めするとこんな感じに。
上部の弛みは理想的だね。
ただちょっと緩くも感じるかな?
念のため1枚減らした状態でも確かめてみますか。
1枚もぎ取って92枚で仮留めするとこんな感じ。
下部分はピッタリで緩さは感じないね。
ただ上部の弛みが物足りないかな。
今回はもぎ取った履帯を戻して93枚で行きましょう。
92枚だと弛みが足りなくてなんか可動式に変えた意味を感じませんし。
ちなみに枚数はもぎ取って調整しているけど、無理に着脱すると接続ピン自体が磨耗する。
着脱はほどほどにしておこう。
ちなみに折れるなどして接着したピンを交換したい場合は
- ピンの頭をデザインナイフなどで削り取る
- 0.5mm径ピンバイスでピンごと接続穴を開けなおす
といった感じでやりなおすことができます。
この画像だと塗装済みだけど……
実際はこのIII号戦車は昨日の時点で完成していたんだっけ。
うむ。
ウェザリング中に一度筆者が破損させてね。
1本取り替えている。
III号戦車J型、組み立て完了!
そんなこんなでようやく形になりました。
これで塗装作業に移れますな。
説明書の記載どおり、パーツは多めに入っている。
多少破損させても代えが利くから大丈夫だ。
余ったのは予備履帯として車体からぶら下げてもよさそうだね。
可動式な分、より表情とかがつけやすそうだし。
作業まとめ
そんなこんなで筆者初のモデルカステン製可動履帯組み立てが終了しました。
筆者のこの可動履帯に対する感想としては……
- 実物同様に1枚ずつ組み立てるので、繋がった板感がして本物に近い
- 細かい調整が可能なので、自然な弛みを表現できる
- とにかく細かく、組むのに時間がかかる
- パーツ数が多い分、値段も高め。
といったところ。
この後塗装をすることにもなるけど
- プラ製なので塗料の食いつきは良好
- 可動部周りは動かしながら塗る必要があり、少々手間
といったことも。
多少組むのは大変だけど、見た目の実感は別格だ。
「こだわりの一品を作る際には是非」
……っといったところですな。
今回はダメになったベルト式の代わりに使ったわけだけど。
あんまり筆者は一つのキットに金をかけるタイプじゃないからね。
どうしても
「可動履帯を買う金でもう1つ戦車が買える」
という思考になる。
ちなみに公式HPによると、2023年7月現在の定価は税込み4400円。
タミヤの古いキットに使うと、車輌よりも高くなりそうな。
ただタミヤの旧製品こそ使いたいですな。
金型流用の都合で一般的に使われていたものと違う履帯を履いていたり、ポリ製で接着・塗装が難しいので。
導入するかどうかは作り手次第だ。
- 理想の完成品はどんなものか?
- それにたどり着くまでにどこまで金と時間と労力を投入できるか?
一番納得できるポイントを探るのもまた楽しみといったところ。
妥協するか、追い求めるか……。
今回はここまで。
次回は部品がそろったIII号戦車の塗装作業となる予定だ。
次回も、お楽しみに~。
この記事で作っているキット
この記事で使った改造パーツ